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エクセル在庫管理、撤退を先送りにした会社が「1年後に払ったコスト」——3つの失敗事例から逐う、決断を遅らせる本当の理由

執筆:Spes編集部
「まだ使えている」——その判断が、じわじわとコストに変わっていく。本記事は、エクセル在庫管理の限界を感じながらも移行を先送りにした3社の失敗事例を軸に構成している。チェックリストや比較表よりも先に「なぜ決断が遅れたのか」という問いに答えることで、読者が自社の現状と照らし合わせられるよう設計している。
失敗事例①:「ファイルが壊れてから気づいた」食品卸・従業員23名

| 課題の整理 現場で起きていること | → | 原因・整理 構造・ボトルネック | → | 解決の方向性 クラウド活用など |
| 記事の整理:課題 → 整理 → 解決 | ||||
神奈川県の食品卸、渡辺商事(仮名)では、在庫管理用のエクセルファイルを5年間メンテナンスしながら使い続けていた。VLOOKUPが入れ子になった複数シートは、担当者の伊藤さん以外にはほぼ触れない状態だった。
転機は2023年9月の連休明け。伊藤さんが体調不良で急遽3日間休んだとき、バックアップから呼び出したファイルのうち1つが破損していた。その週だけで、誤出荷2件・欠品による返金対応1件が発生し、損失は概算で約15万円。それでも経営陣が下した判断は「次回から二重保存を徹底する」だった。
移行に踏み切ったのはさらに半年後、別の担当者がファイルをルールと違う形で上書きして在庫数が狂ったときだった。その時点でシステム移行にかかった期間は3か月、移行コスト・教育コストを合計すると約80万円。「半年前に動いていれば、この間の損失分は出なかった」と渡辺商事の田口部長(仮名)は振り返る。
担当者への属人化+バックアップ運用の甘さが重なると、「ファイル破損」は起こるべくして起こる。問題が発生しても「運用改善」で対処しようとする判断バイアスが、撤退を半年遅らせた。
失敗事例②:「数字は合っていた、でも現場は混乱していた」アパレル小売・店舗3拠点

大阪府内でレディースアパレルを展開する中村ファッション(仮名)は、本店・2号店・EC倉庫の3拠点で在庫を管理していた。各拠点がそれぞれエクセルシートを持ち、週次で本部が集計する運用だった。
帳簿上の在庫数は常に「合っている」状態だったが、現場では別の問題が起きていた。ECで注文が入った商品が実店舗で既に売れていて、出荷できないケース。本店では「在庫あり」になっているのに2号店には届いていない補充漏れ。こうした「数字は正しいが現物がない」状態が、繁忙期の土日に集中して発生していた。
担当の小林さんはクレーム対応に追われながら「次のシーズンが落ち着いたら移行しよう」と毎月先送りにした。結果として、EC事業のキャンセル率が3か月で約8%まで上昇し、リピーター離れが数字として出始めた段階でようやく経営会議の議題になった。
3拠点がそれぞれエクセルを管理し、週次で本部集計する構造は、繁忙期に在庫情報のズレが集中しやすい。
失敗事例③:「担当者が辞めてから、誰もファイルを信用しなくなった」製造業・部品卸
岐阜県の金属部品卸、鈴木部品(仮名)では、在庫管理エクセルを10年近く運用してきた。入庫・出庫の記録はマクロで自動計算されていたが、そのマクロを組んだ担当者が退職した後、誰も中身を理解していない状態になった。
「数字がおかしい気がする」という感覚は現場に広がったが、確認手段がなかった。担当を引き継いだ山田さんは、念のため毎月末に手作業での棚卸しを追加した。エクセルの数字と実地棚卸しの両方をやる二重管理が常態化し、月末は丸2日が棚卸し作業に消えていった。
この「信用できないファイルを使い続ける」状態が1年半続いた。その間に追加した人件費コスト(月末2日×月給換算)だけで試算すると、年間で約90万円超になる計算だ。「システムに移行したら月末が1日で終わった」というのが移行後の報告だった。
3社に共通していた「決断を遅らせた構造」
3つの事例を並べると、撤退判断を遅らせた理由には共通パターンが見える。
| 会社 | 表面的な問題 | 判断を遅らせた理由 | 先送りで積み上がったコスト |
|---|---|---|---|
| 食品卸(渡辺商事) | ファイル破損・誤出荷 | 「運用改善で対処できる」バイアス | 損失+移行コスト 約95万円 |
| アパレル小売(中村ファッション) | EC在庫ズレ・キャンセル増加 | 「繁忙期が終わったら」の先送り習慣 | リピーター離れ+機会損失(定量化困難) |
| 部品卸(鈴木部品) | マクロ属人化・信頼喪失 | 「問題の大きさが見えない」可視化の欠如 | 二重管理人件費 年間約90万円超 |
共通しているのは、**問題がコストとして数字に現れていない段階では、誰も動けない**という点だ。エクセルの維持コストは「払っている感覚がない」まま積み上がる。担当者の残業・手作業の棚卸し・担当者交代時の引き継ぎロスは、P/Lには出てこない。
在庫管理システムへの移行コストは可視化されているが、「エクセルを使い続けるコスト」は可視化されていない——この非対称が、判断を歪める。
移行コストは見積書で「高く」見え、継続コストは帳簿に出ないため「安く」見える。この非対称が判断を歪める。
移行判断を「感覚」から「数字」に変える3つの問い
事例企業が移行後に振り返ってみると、意思決定の前に以下の3点を試算できていれば、判断がずっと早まったと口をそろえる。
- 月末棚卸しに何人日かかっているか?(人件費換算で年間コストを出す)
- 在庫ミスによるクレーム・返金・廃棄は年間何件・何万円か?(記録がなければ直近3か月で推計する)
- 担当者が1週間不在になったとき、業務は回るか?(NOなら属人化コストが潜在している)
これらを紙でもスプレッドシートでも構わないので数字にしてみると、「移行の初期費用」と比較できる形になる。3社のどのケースも、この試算をしていれば移行判断は半年以上早まっていた可能性がある。
現在の運用コストの整理に困ったり、自社の状況が上記の事例と似ていると感じたりした場合は、Spesの相談窓口で現状をヒアリングしてもらうことができる。費用や機能の詳細だけでなく、「今の運用のどこに問題があるか」という整理から相談できる。
よくある質問
エクセルから在庫管理システムに移行する際、データ移行はどれくらいかかりますか?
規模や品目数によって異なるが、商品マスタの整備に1〜2週間、並行運用期間に1か月程度見ておくのが一般的だ。既存のエクセルデータを正規化(重複・表記ゆれを修正)する作業が最も時間を要するケースが多い。
クラウド型の在庫管理システムは、中小企業でも使いこなせますか?
近年のクラウド型SaaSは操作画面のシンプルさを重視して設計されており、IT専任者がいない中小企業での導入実績も多い。ただし「誰が運用設計を主導するか」を最初に決めておかないと、担当者任せになって活用が止まるリスクがある。導入時の運用設計サポートがあるサービスを選ぶのが現実的だ。
Spesはエクセルからのデータ移行に対応していますか?
Spesはクラウド型の在庫・受発注管理SaaSで、複数倉庫の一元管理やEC・卸との在庫連携に対応している。エクセルからの移行については、現状の運用状況のヒアリングから対応しているので、まずはお問い合わせページから相談してみてほしい。
参考:中小企業の業務実態に関するデータは、政府統計ポータル(e-Stat)の商業統計や工業統計から確認できる。
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