エクセル在庫管理「このまま続けて何を失ったか」——中堅製造業の現場マネージャーが語る5つの実損と、移行を決めた瞬間 ─ 在庫管理のDXに | 完全無償クラウド型ソフト「Spes」

 

Column

コラム

エクセル在庫管理「このまま続けて何を失ったか」——中堅製造業の現場マネージャーが語る5つの実損と、移行を決めた瞬間


TwitterFacebookLine

エクセル在庫管理「このまま続けて何を失ったか」——中堅製造業の現場マネージャーが語る5つの実損と、移行を決めた瞬間

執筆:Spes編集部

生産管理を7年担当している伊藤さん(従業員180名・金属部品メーカー、製造部マネージャー)は、2023年の夏に棚卸しのやり直しを3回経験した。エクセルの在庫台帳を複数の担当者が同時に開いて上書き保存し、誰かのデータが消える——よく聞く話だが、それが月次棚卸しの締め日前日に起きると、残業2時間で済まなくなる。「エクセルが悪いとは思っていなかった。自分たちの運用が甘いのだと思っていた」と伊藤さんは振り返る。

本記事では、同じような判断をしている現場マネージャーに向けて、エクセル在庫管理が実際に引き起こしてきた損失のパターンを失敗事例から先に整理する。課題の整理や改善論より先に「実際に何が起きたか」を見てほしい。

失敗① 同時編集による上書きで在庫数値が消えた

Photo by cottonbro studio on Pexels
Photo by cottonbro studio on Pexels

共有サーバーに置いたエクセルファイルを複数人が同時に開いた場合、最後に保存したデータが残り、他の入力は消える。Googleスプレッドシートのようなリアルタイム同期ではないため、排他制御は「担当者同士の声がけ」に依存することになる。

伊藤さんのケースでは、出荷担当と受入担当が別々に在庫台帳を更新し、出荷側の数値(マイナス分)が丸ごと消えた状態で月次報告が上がった。翌月の発注量が過剰になり、資材の過剰在庫が約140万円分発生した。「その月の不良在庫は翌期まで持ち越した」という。

【この失敗が起きやすい条件】

  • 在庫台帳を2名以上が更新する体制
  • ファイルが共有サーバー上の .xlsx 形式
  • 更新のルール(誰がいつ開けるか)が口頭のみ

失敗② バージョン管理の混乱で「正しい台帳」が誰もわからなくなった

Photo by Tiger Lily on Pexels
Photo by Tiger Lily on Pexels

在庫管理のエクセルファイルが増殖するのも、よくある経路だ。「在庫台帳_2024年3月.xlsx」「在庫台帳_2024年3月_修正版.xlsx」「在庫台帳_最新.xlsx」——どれが正しいか、開いた担当者が毎回判断しなければならない。

小林さん(食料品卸・仕入れ担当リーダー、9年目)の職場では、仕入れ担当・倉庫担当・営業アシスタントの3名がそれぞれ別の台帳をもとに発注や出荷指示を出していた時期があった。ある月、同じ商品の在庫数値が3つのファイルで「42個」「37個」「51個」と異なっていた。現物確認の結果は39個。誰のファイルも合っていなかった。

担当者が「自分の台帳が一番新しい」と思って動いている限り、この混乱は繰り返される。ファイル名のルールを整えてもすぐに崩れるのは、更新のたびに「コピーして保存する」という動作を全員が習慣にしてしまっているからだ。

3つの台帳が並存し、現物と一致するものがない状態の例

失敗③ 棚卸しのたびに「消えた半日」が積み上がった

エクセル在庫管理で月次棚卸しを行うと、数値の突合・差異の原因調査・修正入力という3つの作業が毎回必要になる。現物と台帳が合わないことは当然の前提として運用されているため、「差異を埋める時間」がルーティンに組み込まれてしまう。

渡辺さん(電子部品メーカー・品質管理兼在庫担当、4年目)は、月次棚卸しのたびに平均して半日(4〜5時間)を差異確認に使っていた。年間で換算すると50〜60時間。「これが在庫管理の仕事だと思っていたが、システムを変えた後にこの時間がゼロになって、初めて無駄だったと気づいた」と話す。

棚卸しの時間は目に見えやすい損失だが、問題の本質は「差異が出ることを誰も異常だと思っていない」という状態にある。エラーへの慣れが進むと、改善への閾値も上がっていく。

失敗④ 担当者が休むと在庫の「読み方」がわからなくなった

エクセルの在庫台帳は作った人間の論理で設計される。セルの色分けの意味、独自の計算式、関数の参照先——これらが文書化されていることは少ない。担当者が有給や異動でいなくなったとき、「このファイルのF列は何を意味しているのか」を把握している人間がいない、という事態が起きる。

中村さん(食品製造・資材調達担当、前任者から引き継いで2年目)は着任直後、台帳のH列に入っている数値が「安全在庫なのか発注点なのか発注量なのか」を判断できず、前任者に電話で確認しながら作業した。「もし電話がつながらなければ発注を止めるしかなかった」という。属人化は、担当者が在席しているあいだは表面化しない。

失敗⑤ 複数拠点の在庫を「電話で確認する」運用が続いた

拠点が2か所以上になると、エクセルの在庫台帳は拠点ごとに別ファイルになりがちだ。本社と倉庫、あるいは製造拠点と販売拠点で台帳が分かれると、リアルタイムの在庫を把握するには電話やメールで確認するしかない。

鈴木さん(電機部品卸・営業管理担当、部門リーダー)は「営業から在庫を聞かれるたびに倉庫に電話していた。倉庫が混んでいると折り返しになり、その間に受注を保留にしておく必要があった」と話す。1日に5〜10件のこうした問い合わせが発生していた時期、営業のレスポンス速度が落ちて失注につながったケースも出た。

失敗パターン別の実損タイプ一覧

「移行を決めた」3人のマネージャーに共通していたこと

上記の失敗事例に登場した担当者や、同様のケースを聞いた現場管理職の話を整理すると、移行の決断に至るタイミングには共通点がある。「エクセルの限界」を抽象的に感じていた段階ではなく、損失が具体的な数字で見えた瞬間に動いている。

  • 在庫差異による過剰発注・廃棄コストが月次で集計されたとき
  • 属人化によって担当者不在時に業務が止まったとき
  • 複数拠点間の在庫確認ミスで出荷遅延が起きたとき

逆に言えば、「何となく使いにくい」段階では誰も動かない。エクセルの運用上の不便は日常に溶け込んでしまい、改善の優先順位が上がらないまま数年が過ぎる。伊藤さんは「あの夏の棚卸しやり直しがなければ、さらに2〜3年そのまま使っていたと思う」と話している。

クラウド型の在庫管理システムへの移行検討を始めた場合、どのような仕組みが現場の実態に合うかは、自社の拠点数・担当者数・更新頻度によって異なる。Spesのような中小企業向けのクラウド在庫管理ツールは、複数拠点・複数担当者の同時更新に対応しており、バーコード・ハンディ連携による棚卸し効率化も備えている。「まず相談してみる」という入口として、問い合わせページから状況を伝えてみるのも一つの判断だ。

よくある質問

エクセルからクラウド在庫管理に移行するのに、どれくらいの期間がかかりますか?

現場の規模・データ量・既存システムとの連携有無によって異なるが、中小製造業・卸売業の場合、基本的な設定と並行運用期間を含めて1〜3か月程度が目安とされることが多い。既存のエクセル台帳のデータを初期インポートできるかどうかも、選定時に確認するとよいポイントだ。

移行後も担当者がシステムを使いこなせるか不安です。

操作の習熟よりも、「どの数値を・誰が・いつ更新するか」のルール設計が先に必要になることが多い。ツールの操作は1〜2週間で覚えられても、運用フローが整っていないと新しいシステム上でも混乱が起きる。導入前に現在の在庫管理の流れを整理しておくことが、移行をスムーズにする。

エクセル管理で「まだ大丈夫」かどうか、判断する基準はありますか?

更新者が1名・拠点が1か所・月次更新で足りる規模であれば、エクセルで継続できる場合もある。一方、複数人が日次で更新する・拠点が2か所以上ある・在庫数値を営業や他部門もリアルタイムで参照したい、という条件が1つでも当てはまる場合は移行の検討を始める時期だと考えてよい。

在庫管理の現状や移行タイミングについて具体的に相談したい場合は、こちらのお問い合わせフォームから状況をお伝えください。

参考:政府統計ポータル e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)では、製造業・卸売業の事業所規模別の従業者数・出荷額等の統計が公開されており、業種ごとの在庫管理実態を把握する際の参考になる。

TwitterFacebookLine