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スタートアップが「エクセル在庫管理」で詰まる3つの失敗——創業期に起きた実損と、仕組みを変えた転換点

執筆:Spes編集部
「とりあえずエクセルで回す」——事業を立ち上げた直後、それは正しい判断だった。ところが、受注が月に数百件を超えたあたりから、じわじわと綻びが出始める。本記事では、スタートアップの創業期に実際に起きがちなエクセル在庫管理の失敗を3つ取り上げ、何が実損につながったのか、どこで仕組みを変えたのかを整理する。
失敗① 複数メンバーが同じファイルを編集して「正しい在庫数」が消えた

| 課題の整理 現場で起きていること | → | 原因・整理 構造・ボトルネック | → | 解決の方向性 クラウド活用など |
| 記事の整理:課題 → 整理 → 解決 | ||||
EC事業でフィットネス用品を扱うスタートアップ(創業2年目、従業員7名)では、在庫ファイルをDropboxの共有フォルダに置いて運用していた。受注担当の伊藤さんと、倉庫作業を兼務する渡辺さんが、それぞれ別のタイミングでセルを更新する運用だ。
問題は、エクセルが「誰かが開いているとき」に別のメンバーが編集すると、上書き競合が発生する点にある。ある月曜の朝、週末の出荷分が反映されていない古いファイルが「最新版」として保存され、在庫数が実態より60個多い状態で翌日の発注判断に使われた。結果、同じ商品を二重で60個余分に仕入れ、在庫が積み上がった。キャッシュフローへの影響は約40万円分の余剰在庫として残り、3ヶ月後まで倉庫を圧迫した。
失敗② 「在庫あり」で受注を取り続けたら、欠品キャンセルが連発した

コスメのD2Cブランドを運営する別のスタートアップ(創業1年半)では、ウェブサイト上の在庫表示をエクセルの数字から手動で更新していた。担当の中村さんが出荷後にファイルを更新し、サイトの在庫数を別途手入力する、という2段階の作業だ。
繁忙期に差し掛かった11月、一日の出荷件数が平常時の3倍近くに増えた。中村さんの更新作業が追いつかなくなり、サイト上では「在庫10個」と表示されているのに実際の棚はすでに空、という状態が半日続いた。その間に入った注文27件はすべてキャンセル対応となり、顧客からの信用毀損とキャンセル処理工数が同時に発生した。
ECプラットフォームの在庫数と、物理的な棚の在庫数と、エクセルの数字という「3つの在庫数」が存在する状態では、どれかが必ずズレる。手動更新の頻度を上げても、件数が増えれば追いつかなくなる構造的な問題だ。
上図のように、ECサイト・エクセル・実棚という3つの在庫数が独立して存在する状態では、更新タイミングのズレが常態化する。
失敗③ 担当者の退職で「ファイルの読み方」ごと失われた
日用品の卸販売を始めたスタートアップ(創業3年目、従業員12名)では、在庫管理エクセルに独自の計算式と色分けルールが積み重なっていた。「黄色のセルは要発注、赤は欠品目安、数式はマクロで自動集計」という設計を、入社2年目の小林さんが一人で構築・運用していた。
小林さんが転職したのは繁忙期直前の9月だった。引き継ぎは2週間、後任は入社したばかりの山田さんだ。エクセルファイルを開いた山田さんは、セルの参照関係とマクロの意図が把握できず、最初の発注判断で「黄色の意味」を誤解したまま数字を入力した。それが連鎖して、在庫数値が実態と大きくズレた状態で2週間運用が続き、気づいたときには3品目で欠品、1品目で過剰在庫という状態になっていた。
在庫管理の知識がファイルとその作成者にしかない状態を「属人化」と呼ぶが、スタートアップではこれが特に起きやすい。少人数で立ち上げるため、各自がベストと思うやり方をどんどん積み上げるからだ。
3つの失敗に共通する「エクセルの構造的な制約」
上記3つの失敗は、担当者の不注意や能力の問題ではない。エクセルという道具の設計上の限界が、規模が拡大したタイミングで顕在化した結果だ。
| 失敗のパターン | 根本にある制約 | 拡大時の影響 |
|---|---|---|
| 複数人による上書き競合 | リアルタイム同期の非対応 | 誤発注・余剰在庫 |
| 手動更新の遅延 | 外部システムとの自動連携なし | 欠品キャンセル・信用損失 |
| 属人化したファイル設計 | ルール・意図を記録する仕組みがない | 引き継ぎ失敗・在庫数値の崩壊 |
これらは「エクセルの使い方が悪い」のではなく、在庫管理の複雑さがエクセルの想定する用途を超えてしまった状態だ。総務省の「令和3年経済センサス」によると、従業員規模が小さい事業所ほど業務管理ツールの多くをオフィスソフト中心に運用している傾向があり、成長段階でのシステム移行は多くのスタートアップが直面する共通の課題となっている(参考:総務省統計局)。
「仕組みを変える」判断はどこで起きたのか
3社に共通していたのは、「失敗が起きてから動いた」という点だ。損失が可視化されるまで移行を先送りにした。これは合理的でもある——小さな組織でシステム移行の工数を取るのはコストが高い。ただ、上記の失敗が起きた後に「もっと早く動いていれば」と振り返る経営者・事業責任者は多い。
判断の起点になりやすいのは、以下のいずれかのタイミングだ。
- 従業員数が5〜10名を超え、在庫ファイルを複数人が更新するようになったとき
- 販売チャネルが2つ以上(自社EC+モール、実店舗+通販など)になったとき
- 在庫のミスで顧客対応コストや廃棄コストが月単位で発生し始めたとき
- 担当者の交代・増員で「ファイルの引き継ぎ」が困難になったとき
移行はいきなり「完璧なシステムを選ぶ」ことから始める必要はない。まず自社でどのミスが繰り返されているかを棚卸しし、「同時編集の問題なのか」「外部連携の問題なのか」「属人化の問題なのか」を切り分けることが先決だ。
クラウド型の在庫・受発注管理ツールであれば、複数拠点・複数ユーザーでのリアルタイム共有、ECモールとの在庫連動、操作ログの保持による引き継ぎ性向上といった課題を一度に解決できるケースがある。Spesのようなクラウド型SaaSでは、バーコード・ハンディ連携や複数倉庫の一元管理にも対応しており、スタートアップが成長段階で直面する「エクセルでは追いつかない」状況への入り口として検討しやすい選択肢のひとつだ。
自社の課題がどこにあるかを整理した上で、どんな仕組みが合うかを相談したい場合は、Spesのお問い合わせページから状況を共有いただければ、現在の運用に合わせた案をご提案できる。
よくある質問
エクセルから在庫管理システムへの移行はどのくらいの工数がかかりますか?
規模や既存データの整理状況によって大きく異なるが、従業員10名以下・SKU数が数百品目程度であれば、データ移行と初期設定で1〜2週間程度を見るケースが多い。既存のエクセルデータをCSVでインポートできるツールを選ぶと、移行コストを抑えやすい。
スタートアップでもクラウド在庫管理ツールを使うメリットはありますか?
メンバーが数名のうちは「エクセルで十分」という判断も合理的だ。ただ、複数人が同じデータを更新する、ECと実店舗の在庫を同期させる、といったニーズが発生した時点では、クラウドツールへの移行を検討する価値がある。早期に仕組み化することで、後から修正するコストを避けやすくなる。
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