安全在庫の計算式、「正しく使えていない」から欠品が止まらない——卸売業・現場の業務改善担当が陥った3つの失敗と立て直しの起点 ─ 在庫管理のDXに | 完全無償クラウド型ソフト「Spes」

 

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安全在庫の計算式、「正しく使えていない」から欠品が止まらない——卸売業・現場の業務改善担当が陥った3つの失敗と立て直しの起点


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安全在庫の計算式、「正しく使えていない」から欠品が止まらない——卸売業・現場の業務改善担当が陥った3つの失敗と立て直しの起点

執筆:Spes編集部

「計算式はわかってる。でも欠品が止まらない」——そう言って資料を見せてくれたのは、食品卸売を手がける中堅企業の業務改善担当、渡辺さん(40代)だった。安全在庫の計算式は研修で覚えた。Excelにも組み込んだ。それでも、月に数件は取引先への欠品詫び状が出ていた。

問題は「計算式を知っているかどうか」ではなかった。数式に入力する値の取り方と、現場への落とし込み方がズレていたのだ。この記事では、安全在庫の計算が「形だけになって機能しない」3つの失敗パターンを先に示し、そこから正しい使い方と実務への組み込み方を整理する。

失敗その1:「平均リードタイムの平均」を疑わなかった

Photo by Kindel Media on Pexels
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渡辺さんの会社では、仕入先ごとのリードタイムを「過去半年の平均値」で管理していた。主要仕入先のリードタイムは平均3日。これを安全在庫の計算式にそのまま当てはめていた。

安全在庫の基本式は次のとおりだ。

安全係数 × 需要の標準偏差 × √リードタイム。各変数の「精度」が計算結果の精度を決める。

問題は「√リードタイム」の部分に使う値だった。平均値を使っていたため、仕入先が繁忙期に「5日→8日」に延びるケースが計算に反映されなかった。リードタイム自体にもばらつきがある。そのばらつきを無視して平均だけを使うと、タイトな需要期に安全在庫が底をついた。

【正しい対処】リードタイムも標準偏差で管理する。計算式は「安全係数 × √(需要の分散 × 平均LT + 平均需要² × LT分散)」に拡張できる。実務的には「リードタイムが最大延びたときの日数」を保守的に使うだけでも、計算の過小評価はかなり防げる。

失敗その2:需要の「標準偏差」をそもそも算出していなかった

Photo by Tiger Lily on Pexels
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別の事例を見てみよう。建材卸を手がける会社で業務改善を担う伊藤さん(30代後半)は、「安全在庫 = 最大日次需要 × 最大リードタイム − 平均日次需要 × 平均リードタイム」という簡略式を使っていた。この式は計算が簡単な反面、需要の揺れ幅(標準偏差)を直接扱わない。

結果として何が起きたか。取扱品目が200SKUを超えたとき、「最大」の見積もりが甘い品目と過剰な品目が混在し、欠品と過剰在庫が同時に発生した。欠品は現場の緊急手配コストを生み、過剰在庫は倉庫の保管スペースを圧迫した。半年で発生した緊急調達コストの合計は、担当者が試算しただけで月平均30万円を超えていた。

標準偏差を使わない簡略式は、SKU数が少なく需要が比較的安定した品目に限れば実用的だ。しかし品目が増え、季節性や受注波動がある場合は、需要の標準偏差を実際に算出してから式に入れることが前提になる。

計算式の種類向いている状況注意点
簡略式(最大−平均)SKU数が少なく需要が安定品目増・波動増で過不足が拡大する
標準偏差ベースの式SKU多数・季節波動あり履歴データの期間と外れ値処理が精度を左右する
LT分散も組み込んだ拡張式仕入先の納期ばらつきが大きい仕入先別の納期履歴が蓄積されていないと精度が出ない

失敗その3:計算した数値を「見直す仕組み」がなかった

渡辺さんの職場で最終的に大きかったのは、この3つ目の失敗だった。半年前に算出した安全在庫の数値を、半年後もそのまま使い続けていた。

需要の標準偏差は、販売サイクルや商品ライフサイクルによって変わる。新しい取引先が増えれば注文のパターンが変わり、仕入先の物流体制が変われば実績リードタイムも変わる。「計算して設定した」で終わらせると、時間の経過とともに計算の前提だった値と現実がずれていく。

安全在庫は「設定して終わり」ではなく、需要変動とリードタイムの変化に合わせて定期的に見直すサイクルが必要。

伊藤さんの会社では、四半期に一度、主要品目(上位30%のABC分析でA・B品目)の安全在庫を再計算するルールを設けた。見直しの周期を決めるだけで、「気づいたら在庫設定が古かった」という状況は大幅に減った、と伊藤さんは話す。

現場に落とし込むときに確認すべきこと

3つの失敗を踏まえると、安全在庫の計算を現場で機能させるために確認すべき点は次の3つになる。

  • リードタイムのばらつきを確認する:仕入先・品目別に過去の納品実績を引き出し、最短・最長・平均を把握する。ばらつきが大きい仕入先については、平均だけでなくリードタイム分散を計算に組み込むか、保守的な上限値を使う。
  • 需要の標準偏差を算出する:少なくとも直近3〜6ヶ月の日次・週次の出荷実績から標準偏差を計算する。Excelなら「STDEV関数」で算出できる。外れ値(突発的な大口受注など)は除外するかどうかを判断基準として明文化しておく。
  • 見直し頻度をルール化する:設定した安全在庫を次にいつ見直すかを決め、担当者と日程を明記する。業種・品目によって異なるが、季節性のある商品は季節前、安定品目は四半期が目安になる。

これらを整えたうえで、複数倉庫の在庫をまとめて管理したり、発注点アラートを自動で出したりするには、在庫管理の仕組みをシステム側で支える必要が出てくる場合がある。ExcelのSTDEV計算は品目が少ないうちは回るが、SKUが増えると更新漏れやファイルの重さが問題になるのが実務上の現実だ。

Spesのようなクラウド型在庫管理ツールでは、出荷実績に基づく安全在庫・発注点の管理を仕組みとして持てるため、「計算は合ってるのに運用で崩れる」という状況を減らしやすい。どう組み込むかは現場の規模・品目構成によって変わるので、まず現状を整理してから相談する方が具体的な話ができる。気になる点はこちらからお問い合わせいただければ、実務ベースで確認できる。

よくある質問

安全係数はどう決めればよいか?

一般的に、欠品許容率1%(サービス率99%)なら安全係数2.33、欠品許容率5%(同95%)なら1.65が使われる。どの水準を選ぶかは「欠品したときのビジネス上のダメージ」と「在庫を積むコスト」のバランスで判断する。高価な品目や取引先への影響が大きい品目は高め、回転が早く代替調達しやすい品目は低めに設定するのが実務的な目安だ。

標準偏差の計算に使う期間はどれくらいが適切か?

季節変動がある商品は少なくとも1年分、安定した商品は直近3〜6ヶ月が一般的な目安になる。期間が長すぎると古いトレンドに引きずられ、短すぎると一時的な波動に過剰反応しやすい。いずれの場合も、異常な需要(特定顧客の突発大口など)を除外するかどうかを判断基準として明文化しておくと、担当者が変わっても計算がブレにくい。

品目数が多い場合、全品目を計算し直すのは現実的か?

全品目を均等に見直すのは工数がかかりすぎる場合が多い。ABC分析でA品目・B品目(売上・粗利の上位70〜80%を占める品目)に絞って定期的に再計算し、C品目は簡略式や経験則の在庫日数で管理するという使い分けが現実的だ。まず欠品が実損につながりやすい品目から整えるのが優先順位として妥当になる。

計算式の構造を理解した上で「自社の数値の取り方」を見直すことが、欠品や過剰在庫を減らす最初の一歩になる。仕組みの整え方や導入の進め方について、現場の規模感から具体的に相談したい場合はお問い合わせフォームからご連絡いただけます。

参考:政府統計総合窓口(e-Stat)https://www.e-stat.go.jp/(流通・卸売統計など在庫管理の需要実績分析の一次データとして参照できる)

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