Column
コラム
物流業界の2024年問題、現場から始める対策チェックリスト——ドライバー不足・配送コスト上昇に今できること

執筆:Spes編集部
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働上限が年960時間に規制された。法律が変わった日に現場の仕事量が減るわけではない。荷主企業の物流担当者や、EC事業者として自社の出荷オペレーションを抱える方にとって、「対策はわかっている、でも何から手をつければいいかわからない」という状態が続いているケースは少なくない。
この記事では、チェックリスト形式で自社の対応状況を確かめながら、優先度の高い打ち手を整理できるよう構成した。制度の概要は国土交通省や業界団体の資料で確認できるため、ここでは「今日の現場に引きつけた実務の話」に絞る。
まず確かめる:自社は「対策済み」「着手中」「未着手」のどこにいるか

| 課題の整理 現場で起きていること | → | 原因・整理 構造・ボトルネック | → | 解決の方向性 クラウド活用など |
| 記事の整理:課題 → 整理 → 解決 | ||||
以下の10項目を読み、自社の現状に当てはまるものにチェックを入れてみてほしい。
- □ 使用している運送会社から運賃改定・リードタイム変更の通知を受け取った
- □ 自社の出荷量・配送依頼のピークが週・月でどの時間帯に集中しているか把握している
- □ 当日出荷の締め時間を見直す検討を行ったことがある
- □ 複数の運送会社やフルフィルメントサービスを使い分けている
- □ 取引先(バイヤー・卸先)に対して納期リードタイムの余裕を依頼したことがある
- □ 置き配・時間帯指定の緩和など、受取側の行動変容を促す施策を導入している
- □ 倉庫内の出荷作業の標準化・マニュアル化が完了している
- □ 輸送コストの増加分を価格・送料設定に反映するか社内で検討した
- □ 長距離幹線輸送に鉄道・船舶などモーダルシフトを検討したことがある
- □ 受発注データと在庫データが連動しており、出荷タイミングの見通しを数日先まで立てられる
判定の目安
- 8〜10項目:対策の土台はできている。次は「定量で測る仕組み」への移行を検討する段階
- 5〜7項目:着手中。ただし項目ごとの優先度が整理されていないと、リソースが分散しがち
- 4項目以下:2024年問題の影響が表面化してから動くと、運送会社との交渉余地が狭くなりやすい。次の章の優先項目から着手する
対策は「現状把握→優先度設定→仕組み化」の順に進めると、リソースの無駄が出にくい。
優先度が高い3つの打ち手——コスト・納期・オペレーションで分ける

未着手・着手中の項目が多い場合、すべてを同時に動かそうとすると現場の負荷が集中して止まりやすい。影響の大きさとスピードの観点から、次の3軸で優先度を整理するとよい。
1. 配送コストの上昇に対応する(コスト軸)
2024年問題を背景とした運賃改定は、多くの運送会社がすでに実施しているか、実施予告を出している。「これまでの単価で続けてほしい」という交渉は成立しにくくなってきた。
現実的な対応としては、送料の一部を販売価格・送料設定に転嫁するか、複数社比較のうえでコストの最適な組み合わせを組み直すか、どちらかを選ぶことになる。ECサイトを運営している場合、「一定金額以上で送料無料」のラインを見直すことで、客単価を維持しながらコストを吸収できるケースがある。
2. リードタイムの再設定(納期軸)
ドライバーの労働時間が制約される以上、従来の「翌日着」前提の配送体制を維持し続けることは難しくなる路線・地域が出てくる。先に動いた企業では、バイヤーや取引先に対して「お届けまでの目安を2日程度に変更させてください」と先手で丁寧に案内し、クレームをほぼ発生させずに移行できたケースもある。
消費者向けEC(BtoC)の場合、競合他社の動向をみながら「商品の良さや価格競争力でカバーできる範囲かどうか」を先に確認しておくことが重要だ。
3. 倉庫・出荷オペレーションの標準化(運用軸)
人手不足は物流会社だけの問題ではなく、荷主企業の倉庫・出荷担当にも影響する。作業が属人化していると、担当者が休んだ瞬間に出荷遅延が起きる。
標準化の起点として有効なのは、「1日あたりの出荷量・ピーク時間帯・作業工程ごとの所要時間」を記録することだ。数字で把握していない状態で改善策を入れても、効果の測定ができず、継続しにくい。
| 軸 | 主な打ち手 | 着手しやすいタイミング |
|---|---|---|
| コスト | 送料・価格設定の見直し、複数社比較 | 運賃改定通知を受けた直後 |
| 納期 | リードタイム再設定・取引先への先行案内 | 繁忙期前・契約更新前 |
| 運用 | 作業の記録・標準化・データ連携 | 人員変動が起きる前(平常時) |
「データがつながっていない」が対策を止める根本要因になりやすい
上記の打ち手の多くは、「今どれだけの在庫があり、いつ何件の出荷が必要か」がリアルタイムで見えていることを前提にしている。受注データと在庫データが別々のシステム(またはエクセル)で管理されていると、出荷タイミングの見通しを立てること自体が難しくなる。
伊藤さんが運営する雑貨ECの事例を例に挙げると、楽天・Amazon・自社サイトの受注をそれぞれ手動で集計していたため、在庫切れに気づくのが出荷直前になるケースが月に数回発生していた。運送会社からリードタイム延長を打診されたタイミングで、受注一元管理ツールの導入を決断。受注から出荷指示までの流れを自動化したことで、「今週何件をいつまでに出せるか」の見通しが取れるようになり、運送会社との交渉でも「○日以内なら対応できます」と具体的に伝えられるようになったという。
EC事業者向けの受注自動化では、複数モール(楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなど)の受注データを一元管理し、在庫連動・出荷指示の自動化まで対応するサービスがある。Spesでも、ネクストエンジンとのAPI連携を軸に、BPO(電話・FAX・メール受注の入力代行)まで含めた導入支援を行っている。導入規模や業務フローに合わせた相談はお問い合わせページから受け付けている。
よくある質問
2024年問題は荷主企業に直接の罰則があるのですか?
改正労働基準法はトラックドライバー(運送会社側)の時間外労働を規制するものであり、荷主企業に直接の罰則規定があるわけではない。ただし、国土交通省は荷主企業に対して「荷待ち時間の削減」「早出し・当日対応の見直し」などの協力を求めており、是正指導・勧告の対象になりうる。詳細は国土交通省が公開している物流対策関連の資料を参照してほしい(国土交通省公式サイト)。
小規模なECで、運送会社が1社しかないと交渉できませんか?
交渉力は取引量に依存する部分もあるが、「複数社に見積もりを依頼した」という事実だけで条件が変わるケースはある。また、3PL(物流代行)事業者を経由することで、荷主単独では取りにくい運賃水準での交渉が可能になる場合もある。まずは比較の選択肢を持つことが、交渉の前提になる。
モーダルシフトは中小企業でも現実的ですか?
長距離幹線(例: 東京—大阪以上の区間)で定期的にまとまった量を運ぶ場合は、鉄道コンテナや内航船の活用が選択肢に入る。ただし、リードタイムは長くなるため、納期の余裕がある取引・商品に限定して部分的に試すのが現実的だ。全量移行よりも「一部をモーダルシフトしてドライバー依存を分散する」設計が現場には合いやすい。
3つの打ち手は独立した施策ではなく、「受発注・在庫データがつながっていること」を共通の基盤として機能する。
2024年問題は、制度対応というより「自社の物流オペレーションを棚卸しするきっかけ」として捉えると、取り組みの範囲が整理しやすくなる。どこから手をつけるかが見えてきたタイミングで、仕組み化や外部サービスの活用も含めて選択肢を検討してみてほしい。受発注・在庫の連携まわりで課題を感じている場合は、Spesへの相談・お問い合わせも活用いただければ幸いだ。
カテゴリー
- すべて
- 物流ソフトWMS
- 在庫管理と会計の連携
- 在庫データの分析
- 在庫管理ソフトの市場規模
- 海外取引と在庫管理について
- 貿易と在庫管理
- 在庫管理のDX化
- 在庫管理クラウドソフト
- Spesの導入事例
- 中小企業の在庫管理
- 在庫管理ソフトのコスト感
- Spesの無償提供について
- 在庫管理とは
- 在庫管理ソフトによる入出庫管理
- 在庫管理の計画作り
- 飲食業の在庫管理
- エクセル管理からの脱却
- DX・クラウド在庫管理
- 在庫管理の改善
- 発注・安全在庫
- バーコード棚卸・入出庫



