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コラム
エクセル在庫管理を「捨てた会社」が最初にやったこと——業種別・導入ステップ逆算で見えてくる現実的な移行の進め方

執筆:Spes編集部
「システムに移行したいのはわかってる。でも、何から手をつければいいかまったく見えない」——そう言って画面から目を離した伊藤さんは、卸売業の在庫担当歴8年のベテランだった。エクセルの問題は認識している。移行の必要性も感じている。ただ、最初の一歩が踏み出せないまま、今日もシートを開いている。
この記事は、エクセル在庫管理を実際にやめた会社が「最後の状態(安定運用)」から逆算して何を先にやったか、を業種ごとに整理したものだ。課題を並べるのではなく、「どのステップから始めると移行が成立するか」を軸に構成している。
移行後の安定状態から逆算した4ステップの流れ
逆算の出発点——「安定運用」の状態から考える

| 課題の整理 現場で起きていること | → | 原因・整理 構造・ボトルネック | → | 解決の方向性 クラウド活用など |
| 記事の整理:課題 → 整理 → 解決 | ||||
移行を成功させた会社の多くは、「今のエクセルの何が辛いか」からではなく、「移行後に何が実現していれば成功か」を先に決めていた。たとえば、ある食品卸(社員15名)では次のように定義した。
- 在庫数字をリアルタイムで全員が見られる
- 月末の棚卸し作業が2日から半日になっている
- 担当者が不在でも別のスタッフが在庫確認できる
この「完成形の3条件」を決めたうえで、「では何が最後のステップか」「その前に何が必要か」と順番に遡った。その結果、最初にやるべきことは「システムの選定」ではなく、「今のエクセルに入っているデータの棚卸し」だったという。使われていないシートの整理、商品マスタの重複削除——地味な作業から始めたからこそ、移行後のデータ品質が保てた。
業種別に「つまずくステップ」が違う——小売・製造・卸売・ECの比較

導入ステップそのものは4段階(棚卸し→データ整理→並行運用→完全移行)とシンプルだが、各ステップでぶつかる壁は業種によって大きく異なる。
| 業種 | つまずきやすいステップ | 主な原因 |
|---|---|---|
| 小売業 | STEP 1(現状棚卸し) | SKU数が多く、エクセルの列が増殖しすぎて全体把握が困難 |
| 製造業 | STEP 2(データ整理) | 仕掛品・原材料・完成品の区分が曖昧なまま蓄積されている |
| 卸売業 | STEP 3(並行運用) | 取引先ごとに価格・単位が異なり、二重管理の手間が倍増する |
| EC事業者 | STEP 4(完全移行) | モール側の在庫連動タイミングがシステムと合わず欠品・二重販売が発生 |
小売業では、まずエクセルのシート数・列数を棚卸しするだけで1〜2週間かかることが多い。製造業では「仕掛品」の扱いを決めないままデータを移すと、移行後に在庫数字が合わなくなる。卸売業は並行運用期間(エクセルとシステムの両方を動かす期間)が最も長くなりやすく、担当者の負荷が一時的にピークになる。EC事業者は移行そのものより、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなど複数モールへの在庫反映タイミングの設計が難所になる。
「STEP 3 並行運用」で脱落する会社が多い理由
移行失敗の原因として現場でよく聞くのが、並行運用期間の設計ミスだ。「念のため両方使おう」という判断自体は正しいが、期間と担当者を決めずに始めると二重入力が常態化し、どちらが正しい数字かわからなくなる。
- 期間を明示する:「最長2ヶ月。その後はシステム一本化」と社内で合意する
- 正とする数字を決める:並行期間中も「システム側の数字を正」と定め、エクセルは照合用に留める
- 週次で差異を確認する:両者の数字が一致しているかを週1回確認し、原因をその場で潰す
卸売業の中村さん(在庫担当・入社3年目)が所属する会社では、並行運用を3ヶ月続けた結果、「どちらに入力したか忘れる」という状態が慢性化した。最終的にはシステム側を正として強制的に切り替えることで決着したが、「最初からそう決めておけばよかった」と振り返っている。
並行運用期間の設計が移行成否を分ける
移行を後押しするクラウド在庫管理の使い方——ECと卸売の実例
EC事業者の渡辺さん(ECモール担当、複数モール運営)が移行時に直面したのは、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングの在庫を別々のエクセルで管理していたことで発生する「二重販売」だった。注文が入るたびに手動で各モールの在庫数を更新する作業は、繁忙期に追いつかなくなる。
クラウド型の在庫管理システムでは、複数モールの在庫をリアルタイムで連動させる機能を持つものがある。Spesの場合、ネクストエンジンとのAPI連携を通じて各モールの受注データを自動取得し、在庫数の更新・出荷指示をシステム内で一元化できる。渡辺さんのケースでは、この仕組みに移行してから繁忙期の二重販売が事実上ゼロになったという。
受発注のフローを整理したい段階や、電話・FAX受注が混在していて入力作業が負担になっている卸売業では、BPO(業務委託)との組み合わせも選択肢になる。「システムを入れたが、アナログ受注の処理が追いつかない」という状態を防ぐために、移行と並行して受注入力の代行体制を整える会社も増えている。
どの構成が自社に合うか判断がつかない場合は、Spesの相談窓口で現状を整理することから始めるのも一つの手だ。業種・規模・現在の管理状況に応じた構成を提案してもらえる。
よくある質問
並行運用なしでいきなり移行しても大丈夫ですか?
商品マスタが整理されていて、移行前にデータの精度確認が十分できている場合は、並行運用なしで移行する会社もある。ただし、在庫数のズレが発生したときに照合する手段がなくなるため、最低でも1〜2週間は旧データを参照できる状態を維持しておくことを推奨する。
移行にどれくらいの期間がかかりますか?
規模・業種・データの状態によって異なるが、社員20名以下の中小企業では「STEP 1〜4の合計で2〜4ヶ月」が一つの目安になっている。データが整理されているほど短縮できる。製造業や多品種の卸売業では、商品マスタの整備だけで1ヶ月以上かかるケースもある。
エクセルのデータをそのままシステムに取り込めますか?
多くのクラウド在庫管理システムはCSVインポートに対応しているが、列のフォーマットや商品コードの形式を合わせる作業は必要になる。エクセルに重複データや表記揺れがあると、取り込み後の在庫数字が合わなくなるため、データ整理(STEP 2)を丁寧にやることが結果的に移行を早める。
エクセルの限界を認識してから移行を完了させるまでの期間が長くなるほど、その間に機会損失と担当者の疲弊が積み重なる。「何からやるか」が決まれば、動き出せる会社は多い。移行の最初のステップとして現状のデータ状況を整理したい場合は、こちらから状況を共有してみてほしい。
参考:e-Stat(政府統計ポータル) — 業種別の企業規模・IT化動向の統計データを参照する際に活用
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