安全在庫の計算、「やったのに欠品した」現場で起きていた3つのズレ——数式の手前にある判断ミスと立て直し方 ─ 在庫管理のDXに | 完全無償クラウド型ソフト「Spes」

 

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安全在庫の計算、「やったのに欠品した」現場で起きていた3つのズレ——数式の手前にある判断ミスと立て直し方


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安全在庫の計算、「やったのに欠品した」現場で起きていた3つのズレ——数式の手前にある判断ミスと立て直し方

執筆:Spes編集部

「安全在庫の計算式は調べた。でも欠品は減らなかった」——そう話す在庫担当者に、現場取材で何度か出会ってきました。計算そのものは正しくても、入力する数値の選び方と、現場への落とし込み方でズレが生じるケースが多い。今回は、計算後に失敗した事例を先に並べ、そこから「何をどう直すか」を逆算する構成で整理します。

まず「失敗した計算」を3パターン見てみる

安全在庫の算出式自体はシンプルです。広く使われる基本形は以下のとおりです。

この3つの変数に「何の数字を入れるか」で、計算結果は大きくぶれます。以下、実際に起きた失敗パターンです。

失敗①:標準偏差の計算期間が「繁忙期」を含んでいなかった(小売業・渡辺さんのケース)

関東の雑貨小売チェーンで在庫管理を担当する渡辺さんは、年初に安全在庫を一括設定しました。需要の標準偏差を算出するため直近12ヶ月の販売データを使いましたが、前年の年末繁忙期がそのデータに含まれていたにもかかわらず、「外れ値として除外すべきか迷って平均化した」のが落とし穴でした。繁忙期の需要振れ幅を薄めた結果、安全在庫が実態より少なく設定され、翌年末に主力商品で欠品が発生。機会損失は把握しきれなかったものの、「あのとき計算をやり直すべきだった」と振り返っています。

失敗②:リードタイムに「平均値」を使い、最悪ケースを想定しなかった(製造業・中村さんのケース)

金属部品メーカーで資材担当を務める中村さんは、サプライヤーのリードタイムを「通常14日」として計算していました。しかし実際には月末や連休前後に18〜20日かかるケースが年に数回あり、そのたびに生産ラインが止まりかけた。「平均を使えば正確だと思っていた」という認識が、想定外の変動を無視する結果につながっていました。リードタイムの標準偏差も計算に組み込む(拡張式)か、少なくとも「最悪ケース+1日」のバッファを意識的に加える必要があったケースです。

失敗③:安全係数を「とりあえず1.65」にしていた(EC事業者・伊藤さんのケース)

アパレルECを運営する伊藤さんの会社では、「95%のサービスレベルに対応する安全係数1.65」をすべてのSKUに一律適用していました。結果として、在庫回転の速いベーシック品は適正でしたが、季節限定品や新作モデルではオーバーストックが常態化。特に廃番予定品の在庫が想定の2倍近く残り、処分値引きが発生しました。SKUごとに「欠品の許容度」は違うため、一律の安全係数は過剰在庫と欠品を同時に生む温床になります。

【3つの失敗に共通する構造】
安全在庫の計算式を「知っている」ことと「正しく使える」ことの間には、入力値の選択精度というギャップがある。数式よりも先に「どのデータを・どの期間で・どのSKUに適用するか」の判断基準を固めることが、欠品とオーバーストックの両方を防ぐ前提になる。

失敗から逆算する「正しい計算の組み立て方」

3つの失敗を踏まえると、実運用に使える安全在庫計算には次の順序が有効です。

Step 1:SKUをグループ分けする

定番品・季節品・新商品・廃番予定品では欠品の影響度がまったく違います。最低でも「定番(常時在庫)」「季節品」「低回転品」の3つに分けてから計算に入ると、一律適用のオーバーストック問題を避けられます。

Step 2:標準偏差の計算期間に繁閑を必ず含める

直近3ヶ月だけのデータを使うと、季節変動の大きい品目で安全在庫が過小になります。少なくとも1年以上(可能なら24ヶ月)のデータを使い、繁忙期の需要スパイクが標準偏差に反映されているか確認してください。

Step 3:リードタイムは「平均」と「最悪ケース」の両方を把握する

サプライヤーへのリードタイムは月次や四半期ごとに実績を記録し、「通常値」「最悪値(過去2年の上位10%)」の両方を持っておくことを推奨します。欠品リスクが高い品目には最悪値に近い数字でリードタイムを設定するのが現実的な対処です。

Step 4:安全係数はSKUの欠品許容度で変える

サービスレベル目標安全係数の目安適用場面の例
90%1.28低回転・代替品あり
95%1.65定番品・一般在庫
99%2.33欠品が生産停止に直結する部品など

係数を上げれば欠品は減りますが在庫コストは増えます。全品目に2.33を使うのではなく、「欠品したときの損失が大きい品目だけ高く設定する」という考え方が、在庫全体のコスト効率を保ちながら欠品を減らすうえで現実的です。

計算結果を「使える状態」に保つ仕組みの作り方

安全在庫は一度設定したら終わりではありません。需要パターンもリードタイムも時間とともに変わるため、定期的な見直しと再計算が必要です。ここが形骸化すると、設定した数値が「現場の実態を反映していない数字」として放置されることになります。

見直しのタイミングとしては、「3ヶ月ごとの定期更新」と「需要急変時の随時更新」の2軸が現場で機能しやすいです。特に季節品は販売開始の6〜8週前に再計算する習慣を持つと、繁忙期の欠品リスクを前もって抑えられます。

また、正確な需要の標準偏差を計算し続けるには、SKUごとの日次・週次販売データが整理されている必要があります。エクセルで管理している場合、SKUが50を超えたあたりから計算の更新作業が追いつかなくなる現場が多い。このような状況では、在庫管理システム側で標準偏差や発注点を自動算出できる仕組みに移行することが、計算精度の維持につながります。

クラウド型在庫管理のSpesでは、需要の実績データをもとに安全在庫レベルの適正な設定と更新を一元的に扱える仕組みを備えています(Spesの機能詳細はこちら)。発注から出荷指示まで自動化することで、計算した安全在庫レベルの適時調整と補充漏れへの対応も現場ベースで運用できます。EC事業者向けには複数モールの在庫・受注を一元管理する機能も用意されており、販売チャネルが増えるほど手動計算の限界を感じやすい在庫管理の課題に対応できます(EC向け在庫管理の手順まとめ)。

よくある質問

安全在庫と発注点は何が違うのですか?

発注点(reorder point)は「在庫がこの数量を下回ったら発注する」というトリガーラインです。計算式は「平均日次需要 × 調達リードタイム + 安全在庫」で求められます。安全在庫はその発注点を構成する一要素であり、欠品リスクへの備え分にあたります。

小規模な企業でも安全在庫の計算は必要ですか?

SKU数や取扱量が少なくても、調達先が限られている場合やリードタイムが不安定な場合には計算する意味があります。一方、商品数が非常に少なく需要が安定しているなら、経験則に基づくバッファ在庫でも事足りるケースはあります。「計算して設定する」か「経験値で持つ」かは、欠品が生じたときの損失規模で判断するのが合理的です。

需要の標準偏差はどのツールで計算できますか?

エクセルの場合、STDEV関数で求められます。ただし対象期間のデータをSKUごとに整理しておく前提が必要です。管理するSKUが多い場合は在庫管理システム側で自動計算させる方が更新コストを抑えられます。

安全在庫の計算が現場でうまく機能していないと感じている場合や、SKU数が増えて手動管理に限界を感じている場合は、Spesへご相談ください。現状の在庫管理フローを確認しながら、改善の方向性をご提案できます。

参考:統計データや在庫・発注に関する公的な業種別調査は、政府統計ポータル(e-Stat)で確認できます。

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